習近平氏の描く「国家資本主義」が世界に与える経済ダメージ8兆7400ドル

政策/経済

現在中国の第5代最高指導者の席に就いている習近平氏は、自ら国家主席席に長年就いていられるように憲法を変えた。
2018年2月25日の中国共産党中央委員会において、国家主席の任期を「2期10年まで」とする憲法の条文を削除する改正案を、国営新華社通信を通じて発表。その10年目の任期を目前に控え、習近平氏が続投出来るように、中国経済を民間主導ではなく、国家主導に切替えている。
まず、不動産バブルを沈静化させる動きを見せた。2020年夏に共産党政権が導入した不動産融資規制の“3つのレッドライン”。規制の強化によって中国の不動産セクターでは恒大集団などの資金繰りが逼迫して不動産市況が悪化。

次いでネット業界の代表的存在のアリババに対し、独占禁止法違反で過去最大の罰金を科した。2021年1-3月期には上場以来初めての赤字を発表。4-6月期は営業利益が11%減となる決算を発表した。アリババだけではなく、配車アプリ大手のディディ(滴滴出行)に政府の調査が入り、SNS大手のてテンセント(騰訊控股)への指導や処分が行われネット業界への締め付けは強くなる一方だ。

次に習近平氏が、どの業界をターゲットに規制を強めてくるのか、中国国内では噂やデマが飛び交い、業績のイイ業界は戦々恐々としている状態だ。海外の投資家は中国への投資した資金を引き上げており、香港市場の日経平均に該当する香港ハンセン指数は2021年3月に31,000だったものが11/23には24,650まで下がった。

2021年7-9月期中国のGDP成長率はマイナス3.0%となった。2017年14.2%成長を頂点にその後、減速傾向にあった。それでも2017年6.9%、2019年5.9%だったが2000年には2.3%となり、2001年にはマイナスになる可能性も出てきた。

このまま国家資本主義が進めば、中国の年間2兆ドルにも上る外国のモノとサービスへの需要がリスクにさらされることになる。経済効果NETが独自に、中国の建設業界や金属消費に影響を受けやすいチリやオーストラリア、中国富裕層の個人消費が減少すれば「ルイ・ヴィトン」や「BMW」など高級品への影響を試算。もし2021年度ゼロ成長になれば、概算で8兆7400ドル近くのダメージを1年間で与えることになる。

習近平氏が長い期間最高指導者の席に就いてたいという、欲求のためにこれだけ多くのダメージを世界に与える危険性がある。それだけに習近平氏にとって魅力的に見えているのかも知れない。

中国の7-9月期GDP成長率は4.9%に減速(PDFファイル)

我が国の通商と経済の構造変化(WEBサイト)

2021/11/24 経済効果NET
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