2021年3月20にちに海外からの観客を断念する決定がされました。これを受けてどの程度のダメージがあるのか、色々な方が経済波及効果を計算されています。
大和総研 経済調査部 エコノミスト 鈴木 雄大郎氏の計算によると、消費支出で600〜700億円減少、日本国内向けチケットが50%に削減された場合には、1400億円程度減少すると報告しています。
東京都による試算では、大会参加者・観戦者の消費支出は2,000億円程度、グッズの売上3など国内の家計消費支出が3,000億円程度、チケットの売上高は900億円と見積もられていました。そして、このうち1~2割が海外に向けて発売される予定でした。
コロナ前の2019年の観光消費統計によると、日本人の国内旅行は1人1回で平均60,995円。訪日外国人は137,948円でした。組織委は五輪の招致段階で780万枚のチケットを用意すると想定していましたが、最終的に一般販売枚数の詳細は明らかにされていません。仮に780万枚の10%が、日本国内に再販されたとすれば、
780万枚✕10%=7.8万枚(A)
137,948円(訪日外国人観光消費)-60,995(国内旅行観光消費)=76,953円(B)
7.8万枚(A)✕76,953円(B)=600億円 という計算だと思われます。
これに日本国内向けの観客が50%に制限された場合には合計で1400億円程度の
野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト木内 登英氏によると、東京オリンピックに海外からの観客を招かない方針にした場合の、経済損失の合計は1,961億円と算出しています。
木内氏の計算は以下の様になります。
毎日新聞電子版の報道によると、海外からの観客は100万人規模と想定されているそうです。
仮に、海外観光客が一人当たり5試合を日本で観戦するとすれば、海外で購入されたチケットは500万枚程度、全体の約50%となるとしています。
大会組織委員会はチケット販売の売上見通しは約900億円と発表していますので、その50%にあたる450億円が減少するという計算です。
木内氏は、訪日観光客の消費額を以下の様に計算しています。
新型コロナウイルス問題が本格的に生じる前の2019年には、海外からの訪日外国人観光客数は3,188万人でした。他方、訪日外国人観光客が日本で宿泊費、飲食費、交通費などに支出した、いわゆるインバウンド消費は4兆8,113億円でした。これから、一人当たりのインバウンド需要は15万1,000円程度と計算することが出来ます。
東京オリ・パラをキッカケに来日する観光客を100万人とすれば、観光消費の減少額は1,511億円。チケットの販売減少額は450億円。合計で1,961億円という計算です。
関西大学の宮本勝浩名誉教授は、2360億円の減少と算出しています。100万人規模の訪日客が減少しその半数50万人が国内観光客になると想定。外国人観戦者の大会中の消費支出や大会後のリピート観光による消費支出が減少するとしています。
海外向けに販売されていた63万枚のチケットの払い戻し、国内観客も、会場定員の50%に削減され、これに該当するチケットの払い戻し金額を加えています。
関西大学によると、資料提供元との取り決め等により、報道機関以外の方への資料提供は行っておりません。とのことで計算の詳細を伺い知ることは出来ませんでした。
いずれも信用できる専門家ですが、計算結果がこれだけ異なることが、経済効果がなかなか信用されない原因の一つになっています。表を見ていただくと分かる通り、3者3様の数字で計算しています。「減少する訪日客」から「訪日客向けに販売したチケット枚数」1人あたりの訪日客の消費額まで、算出方法がバラバラです。
この原因の一つは、「予想」だからです。これから起きるであろう未来の事を予想して計算しているからです。既に終わった過去の出来事に関してなら、観光客が消費した金額も、来日した観光客数も、バラバラにならない筈です。算出する人の「想定値」を排除できれば、経済効果にバラツキは無くなります。
経済効果NETで行っている経済効果の算出は、基本的に過去の出来事を対象として、「想定値」を排除しています。政府の統計データや、主催者から開示いただいたデータ、または消費者に大規模なアンケート調査を行って数値を使用しています。
文責/江頭満正